純愛以上、溺愛以上〜無愛想から始まった社長令息の豹変愛は彼女を甘く包み込む~
初耳
二人で飲食するのはこれで二回目だったが、高原への気持ちを自覚したばかりの私の緊張は、前回の比ではなかった。だからこれまでと比べて、私の口数は少なかったと思う。喋らない分、私はマスターの料理を少しずつ口に運んでは、やっぱり少しずつお酒のグラスに口をつけていた。
時々視線を感じて顔を上げれば、そこには必ず優しく細められた彼の目があった。その度に私の鼓動は弾み、胸の奥が熱くなった。
私たちの会話は静かなものだった。高原が話しかけてくることに対して私がとつとつと答えるという、傍から見れば盛り上がりに欠けていたと思う。けれど、それが良かったのか、いつの間にか私の緊張もだいぶ和らいだ。その上ほどほどの酔い加減も手伝って、ふわふわした心地になっていた。
お酒がなくなった代わりにウーロン茶を注文すると、それと一緒にマスターがデザートを出してくれた。女性にだけ出してるんだ、と言って私の前に置いたのは、淡い紫色が綺麗なぶどうのジェラートだった。
「マスターが作るのは、本当になんでも美味しいわ……」
しみじみと言いながらジェラートを口に運ぶ私を見て、高原はくすっと笑った。
「幸せそうな顔して食べるよな」
「だって、美味しいんですもの。高原さんも食べてみます?」
私はそう言うと、身を乗り出すようにして、ジェラートをスプーンに乗せて高原の口元に差し出した。
きっと酔っぱらっていたのだと思う。素面の時だったら、絶対にこんなことはやらない。まだ気持ちを隠しておきたい相手であればなおさらだ。
高原は私が取った行動に、意外にもうろたえた様子を見せた。
動じる彼を見たのは初めてのことだったから、私は《《悪い意味で》》嬉しくなった。いつも彼がそうするように、私はからかうようなにやにや笑いを浮かべながら、彼の口元にさらにスプーンを近づけた。
「ほら、美味しいですよ」