純愛以上、溺愛以上〜無愛想から始まった社長令息の豹変愛は彼女を甘く包み込む~

「わ、わかった。分かったから」

あぁ、また脅迫するような言い方をする――。

でも、それも今は甘い言葉に聞こえて、私は耳を熱くしながらこくこくと頷いた。

「それでいい。――行こうか」

高原はそう言うと、私の手を引いたまま駐車場へ向かった。

どうして手を繋いだままなの――。

「あ、あの……」

「またふらふらして、人にぶつかるといけないから、駐車場までこのまま行こう」

くすりと笑いながらそう言われて、たった今そういうことがあったばかりだった私は赤面しながら小さく頷いた。

車に乗ってシートベルトをかけてから、私はバッグの中から財布を取り出した。楡の木で、五年前のお礼として支払おうとした飲食代を、高原は払わせてくれなかった。だからその代わり、微々たる金額だが、せめて駐車料金くらいは払わせてほしいと思ったのだ。すべて負担してもらうのは心苦しい。

しかし、高原は私の申し出を断わった。慣れた手つきでコインを支払い機に入れ、ゲートが開いたのを確認すると、ゆっくりと車を発進させた。

「ありがとうございました……」

「気にしなくていいから」

高原は大通りに出る手前で一時停止し、ウインカーを出した。

カチッカチッという音を耳にしながら、私は店にいる時に訊きそびれたことについて考えていた。聞きたいことはたくさんあったが、まずはこれと思った一つを口にする。

「あの、確認なんですが……。本当にあなたが、五年前のあの時、私を助けてくれたあの人なんですか?」

ハンドルを握る高原は、前を向いたまま答える。

「あぁ」

「あれは、高原さんだったんですか……」

当時のことを思い出してつぶやき、はたと気づく。

「そう言えば、下のお名前って、宗輔さんでしたものね。全然繋がらなかった……」

ため息をつく私に、彼は言った。

「もう少しだけ、時間もらってもいいか。少し話をしたいんだ」

断る理由はなかった。むしろ話を聞きたい。

「はい」

高原は私の返事を聞くと、ちょうど車の流れが途切れたタイミングで、私のアパートがある方とは反対側に向かってハンドルを切った。
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