純愛以上、溺愛以上〜無愛想から始まった社長令息の豹変愛は彼女を甘く包み込む~
宗輔はくすりと笑うと、私の手を取った。
「佳奈、改めて言わせてくれ。……君が好きだ。俺と付き合ってください」
その言葉を聞いた私は、束の間感慨に耽りそうになった。
あんなに大嫌いと思っていた人と、まさかこんな関係になるなんて――。
だから一瞬、返事が遅れてしまった。
「……よろしく、お願いします」
「佳奈?」
その間を、私が迷っているからだと捉えてしまったのか、宗輔の声に不安が混じった。
「ごめんなさい。今、ものすごく感じが悪かった時のあなたを思い出してしまって」
そう言う私に、宗輔は苦笑を浮かべた。
「あれは本当の俺じゃなかったから」
「えぇ、もう知ってます。……大好きよ」
私はそう言って宗輔の体に腕を回した。
彼は私の言葉をかみしめるように微笑むと、優しいキスを落とした。それから名残惜しそうに唇を離すと、口調を改めて言った。
「あのさ、聞きたいことがあるんだけど」
「何?」
「ここ最近の佳奈は、俺のことを避けていただろう?会社を訪ねれば、必ずと言っていいほど他の二人が先回りして俺の対応に出てきてさ。その隙にいつも君は席を立ったり、どこかに電話し始めたり……。あれは、どうして?」
本当のことを言うのがためらわれて、私はうつむいた。
「あれは……」
宗輔は、言い淀んでいる私の両頬を手で優しく包み込んだ。
「言って。言わないと……」
宗輔は私の唇をぐいっと塞いだ。舌を絡めとるキスに負けて、ぐったりしてしまった私の頭を引き寄せながら、彼は耳元に囁く。
「言う気になった?」
「わ、分かりましたから……。もう、なんなのかしら」
宗輔の甘い脅しに、体が火照りかけそうになる。私はそれをごまかすように、ぶつぶつ言いながら彼から離れて、シートに背を預けてため息をついた。
「本当はこんな話、聞かせたくなかったんですけど……」
大木から嫌がらせのような態度を取られていること、宗輔の対応に出た日はそれがさらにひどくなること、そして恐らくその「きっかけ」は私が大木の告白を拒否したこと――それらを私はぽつぽつと話した。
聞き終えた宗輔は唸った。
「俺の対応に出た日には、それが特にひどくなるって?なんだよ、それ」
「たぶん、ですし、同僚の勝手な想像だけど……どうも課長は、あなたに対して嫉妬していたんじゃないか、と。あなたとのことで、嫌なことも言われたし」