純愛以上、溺愛以上〜無愛想から始まった社長令息の豹変愛は彼女を甘く包み込む~
ある日のデート
こうして私たちは交際を始めた。
私の休みは週末。しかし、一方の宗輔の休みは不定期だったから、互いの仕事帰りに週に一、二度ほどのペースで、夜にどこかで食事を共にするのが私たちのデートだった。
宗輔の仕事は、時間の融通はつけやすそうに見えた。けれど実際は父親の仕事も手伝っていたから、忙しいはずだった。
だから私は言ったのだ。無理して時間を作らなくてもいいのだと。
しかし、彼はこう言って笑った。
―― 佳奈に会えると思って頑張っているんだから、俺の楽しみを取らないでくれ。
そんな風に言いながら甘い目で見つめられてしまって、私はそれ以上何も言えなくなってしまった。
そうして今に至っているわけだが、仕事を終えた私がロッカーを開けて一番初めにすることは、携帯の画面を開くことだった。そしてその夕方、もしかしたら会えるかもしれないと事前に言われていた通り、宗輔からメッセージが入っていた。
今日はもうすぐ帰れる。食事に行こう―。
私は嬉しくなって、そわそわしてしまった。久美子と戸田がまだ来ていなくて良かったと思う。もしもこんな所を二人に見られたら、彼女たちの目をごまかせる自信はない。近くの書店で待つと、大急ぎでメッセージを返し終えた時だった。
「お疲れ様!」
口々に言いながら、久美子と戸田が入って来た。
セーフだ。
私はそそくさと身支度を終えると、二人に挨拶をし、できるだけいつもと変わらない態度を取るように気をつけながら、ロッカールームを出た。
会社を出た私は、通りを少し歩いた先にある書店に入った。宗輔が来るまでと思いながら、雑誌を手に取る。
本当は、宗輔は会社まで迎えに来たがったが、私はそれを止めた。
自分で待ち合せ場所まで行くから――。
けれどそう言う私に、彼は甘く囁いた。
「少しでも長く一緒にいたいんだよ。佳奈は違うのか?」
「そんなことない」
弾かれるようにうっかりとそう答えてしまい、結局、私は宗輔の迎えを完全に断ることはできなかった。