純愛以上、溺愛以上〜無愛想から始まった社長令息の豹変愛は彼女を甘く包み込む~

歌わないカラオケタイム


かおりに引っ張られるようにして連れていかれたのは、近くのカラオケボックス。

ちょうど客の入れ替えの時間に当たったらしく、待つことなく案内されたのは、4、5人でいっぱいになるような部屋だった。

いちばん最後に部屋に入った私は、空いている席を見てがっかりした。いや、予想はしていたのだが……。

かおりは当然のように前田の隣に座っている。どんな曲を入れようかと、すでに二人して楽しそうだ。そして空いているのは、高原の隣……。

やっぱりこうなるわよね――。

またしてもかおりの勢いに呑み込まれてしまった、と私は密かに肩を落とす。

しかし、このまま立っているわけにもいかない。私は仕方なく高原の隣に腰を下ろした。二人掛けの長椅子は、実際に座ると隣同士の距離が近かった。高原と距離を取るために、できるだけ壁よりの端の方に座る。

狭苦しいのはこの人が大きいせいだ――。

八つ当たりのようなことを思いながら腕を抱くように組み、壁にぴたりと体を寄せる。

かおりと前田の様子はどうだろう、と二人の方を見ると、やっぱり私と高原がいなくても何の問題もなさそうだ。

お金だけ払って帰っちゃおうかな――。

そう思っていたら、何飲む?何食べる?と、かおりが矢継ぎ早に訊ねてきた。それにうっかり素直に答えていたら、気がついた時にはこの場を抜け出すタイミングを失ってしまっていた。

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