純愛以上、溺愛以上〜無愛想から始まった社長令息の豹変愛は彼女を甘く包み込む~
「言って。言わないなら……」

 にっと笑ったかと思うと、彼は私の唇をぐいっと塞いだ。

「んっ……」

 濃厚な彼のキスに負けてしまった。
 ぐったりしてしまった私の頭を引き寄せて、彼は耳元で囁く。

「どうだ?言う気になったか?」
「わ、分かりましたから……。もう、なんなのかしら」

 彼の甘い脅しに体が火照りかける。それをごまかすようにぶつぶつ言いながら、私は彼から離れてシートに背を預けた。

「本当はこんな話、聞かせたくなかったんですけど……」

 ため息を一つついて、私は口を開く。大木から嫌がらせのような態度を取られていること、宗輔の対応に出た日はそれがさらにひどくなること、そして恐らくその「きっかけ」は私が大木の告白を拒否したことなどを、時折口ごもりながら話した。
 聞き終えて彼は唸った。

「俺の対応をした日には、それが特にひどくなる?なんだ、それは」
「たぶん、ですし、同僚の勝手な想像だけど……。課長はあなたに対して嫉妬していたんじゃないか、と。それに、あなたとのことで嫌なことも言われたりして」
「俺とのことで、嫌なこと?」
「遠回しだったけど、侮辱するようなことを言われたんです。……それ以上は聞かないで」

 大木の発言を思い出し、再び怒りが再燃しそうになったが、唇を噛んでどうにかそれを抑え込む。

「思い出したくないことなら、聞かないよ」

 宗輔は穏やかに言いながら、私の手をきゅっと握りしめる。
 その手を握り返しながら、私は続けた。

「だから同僚たちに頼んだの。私があなたの対応をしなくなれば、少しはそういうことが減るかと思ったから。あなたを避け続けてしまって、本当にごめんなさい。だけど課長が異動するまでは、このままの形を取りたいの」
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