純愛以上、溺愛以上〜無愛想から始まった社長令息の豹変愛は彼女を甘く包み込む~
約束の日。
着いたという連絡を受けて、私は部屋を出た。
アパート脇に止まる彼の車に近づいて行くと、宗輔が降りて来る。彼は私が手にした小さなバッグを見ると、照れくさそうな顔をした。
「準備、してきたんだな」
ぼそっと言われて急に恥ずかしくなり、私は目を逸らした。
「約束、したから」
宗輔は嬉しそうに言う。
「今日は佳奈とゆっくり過ごせるんだな。――さて、行こうか。映画もちょうどいい時間だ」
私は頷いて車の助手席に乗り込んだ。
映画を見た後、スーパーで一緒に食材などを見繕う。それを車に積み、どきどきしている私を助手席に乗せて、宗輔は自分のアパートに向かって車を走らせた。
「ここ?」
車から降りた私は、目の前の建物を見上げた。
これは――アパート、ではない。マンションと呼んだ方がしっくりくるような建物だ。
「ここの一番上の部屋。行こう」
宗輔は私を促しながらエントランスを入っていき、エレベーターのボタンを押した。
到着したエレベーターに乗り込みドアが閉まると、二人きりであることが急にいつも以上に意識された。私は、何か話さなければと追い詰められたような気持ちになる。
「ここ、マンションなのね」
「ま、一応ね」
「こんな立派な所に一人で住んでいるなんて。私の部屋なんか恥ずかしくて見せられないわ」
「ここは賃貸で古いし、立派ってほどでもないと思うけどね。――それより、どうしたんだ。緊張してるのか」
宗輔は落ち着かない様子の私に気がついて、身をかがめて私の顔を覗き込む。
「それはそうよ。だって……」
宗輔は私の額にキスして言った。
「引き返すなら、今のうちだぞ」
「……帰ってほしいのなら帰るけど」
「まさか」
そう言うと宗輔は私の手をぎゅっと握りしめた。
「一緒にいたい」
「えぇ……」
私もまた宗輔の手をぎゅっと握り返す。
それだけが目的なわけではない。けれど、この前の会話を思い出すと体中が熱くなってくる。
私ったら欲求不満なのかしら――。
今からもうそんなことを考えているなんて、宗輔に知られたくない。