純愛以上、溺愛以上〜無愛想から始まった社長令息の豹変愛は彼女を甘く包み込む~
食事を終えて、二人して食器を片づける。
一緒に暮らしたらこんな感じなのかしら――。
そんなことをふと思う。私は慌ててその妄想を頭の中から追い払い、ソファに座って私を眺めていた宗輔に声をかけた。
「宗輔さん、ハーブティ、飲んでみる?」
「持ってきたのか?」
「えぇ。食後にどうかなと思って」
「それなら飲んでみるかな」
私はハーブティを淹れたマグカップを、宗輔の前のローテーブルに置いた。
ハーブティは好き嫌いがあるからどうかと思ったが、彼はその香りが気に入ったようだった。
「これは、花の香り?」
「そう。カモミールっていうお花のお茶。リラックス効果があるらしいの」
「リラックス効果、ねぇ……」
くすっと笑いながらそう言うと、宗輔はマグカップをテーブルの上に戻した。私に向かって腕を伸ばす。
「佳奈、ここに来て」
私はどきどきしながら、ぎくしゃくとした動きで彼の傍まで行く。その隣に腰を下ろそうとしたら腕を引かれて、宗輔の脚の間にぽすんとお尻が落ちてしまった。
「定位置はここだろ」
私の体を横から抱くように腕を回しながら、宗輔は耳元で囁いた。
彼の熱い息が耳を撫で、私はぴくりと体を強張らせた。
「緊張してるのか?だから、リラックスするお茶なんか淹れたわけ?」
すぐ近くに宗輔を感じてどきどきしながらも、私はあえてつんとした物言いをした。
「もちろん緊張してるわ。宗輔さんは違うの?もしかして、こういうことに慣れているのかしら」
宗輔は私をぎゅっと抱き締めた。
「俺だって緊張してるんだよ。ずっと好きだった人が今こうして自分の部屋にいて、腕の中にいるんだから。――ところで」
宗輔は腕の力を緩めると、私の顔を覗き込んだ。
「さっきから、緊張とは違った、何か考えるような顔をする時があるよな。心配なことがあるのか?」