越後上布が紡いだ恋~祖母の着物を譲り受けたら、御曹司の溺愛がはじまりました~
「あ、堤さん。面白かったですよ、あの着物の記事」

 普段あまり関わりのない部署の女性から、軽く肩を叩かれた。

「本当ですか? ありがとうございます!」

 こんな風に言われたのは、今回が初めてじゃない。編集長曰く、ウェブ連載のコラムはかなり好評で、SNSの反響も大きいらしい。

 哲朗自身のファッションセンスやモデル顔負けの美貌が目を引いたというのもあるが、これまで着物に親しんでいなかった人々の、潜在的な需要を掘り起こせたのだと思う。

 着物に興味はあっても、着こなし方がわからないとか、気軽に入って買える店を知らないとか、様々な理由で皆が二の足を踏んでいたのだ。

 ウェブの強みを生かし、丁寧な着付け解説の動画を載せたのも良かったのだろう。リサイクル着物店の『かきうち』にも協力してもらったのだが、店長の美里からは新規のお客さんで賑わっていると感謝された。

 手応えを感じた私は、哲朗からり合いの着物デザイナーやスタイリストを紹介してもらい、次々と新しいテーマを打ち出した。着物が映えるスポットを特集したり、ポップアップイベントとコラボしたり。

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