天国と繋ぐ携帯電話
告白するつもりだった。ただの日常の一部を特別にしたくて、勢いに任せて変に語尾が上がっていたことは、私の心臓の音でかき消される。


するとそうちゃんはいつも通りに


「んじゃあ……駅前集合な!」


と、いつも通りのニカッとした笑顔をして、いつも通りにサヨナラの手を大きく振った。


その日の夜は眠れなかったのをよく覚えている。


告白の予行練習を何回もして、洋服だって何度も変えてみたりして。


苦手な朝もスッキリ起きれて、1番お気に入りのリボンで髪をまとめて……私は家を出た。


10時に駅前集合。


なのに10時30分になっても……11時になっても……そうちゃんが来ることは無かった。


告白することを悟って、来たくなくなったのだと。遠回しにフラれたと思った私はおぼつかない足取りで家に帰った。


帰ると家の中でお母さんが青ざめた顔つきで私に言った……


「宗一くん……事故にあったって」


そこからはよく覚えていない。


待ち合わせ場所に来るまでの交差点で事故にあったこと。駅から遠回りの交差点にいたこと。手には誰かに渡すプレゼントがあったこと。


そうちゃんを殺したのは私だ。


お父さんーーー西条孝典(さいじょうたかのり)の時もそうだった。


お父さんはよく「美桜ために頑張るからな」と私の頭を撫でてくれて、私は嬉しかった。


でも……それは呪いだったようだ。


裏を返せば私がいなければお父さんは頑張る必要なく、過労死なんてせずに住んで。お母さんも夜遅くまで働かなくてよくて。


「……全部私のせいなのに」


どんどん暗くなっていく空はそんな私を追い込んでいるようで、私は必死に朝になるのを祈っていた。


◇◇


朝になった。相変わらず、眠れたのは朝方で、私は起きるとシャワーを浴びておにぎりを食べて家を出た。


朝日がいやに眩しくて、全身を刺されているような感覚が嫌になる。
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