天国と繋ぐ携帯電話
クラスに入ると、1年から仲良い人達で既にグループができていて、私は指定されている席に座った。


どうやらクラスでは親睦会をするらしく、店やら経費やらを淡々と決めているようだ。


「あの子も誘うでしょ?」


クラスメイトのひとりが私の方をチラチラと見ていて、あの子……というのはどうやら私の事らしい。


「あー……西条さん?私、1年同じクラスだったんだけど、ノリが悪いって言うかキツイっていうか。1人が好きなタイプの子」
「そうなの?なら誘ったら逆に悪いか」


誘われても断るつもりだったけど、1人が好きなタイプだと人に決められるのは少し傷つく。


少しクラスの中で雰囲気が悪くなっているのを感じてと、1組の男女が私の前にやってきた。


「西条さん、この用紙に名前書いてくれない?」
「先生が書いとけって」


私はそれを無言で受け取ると、紙に名前を書き、そのまま返した。


2人と目があった瞬間……昔の記憶がフラッシュバックしてくる。


『お前のせいで宗一くんは事故にあったんだよ!』


私を心底憎んだひどく冷たい視線。


「……書いたので」


そう言うのが精一杯で、私は青ざめた顔を俯かせた。するとそれを見ていた周囲から


「なにあれ。人見知りにしては酷くない?」


と、冷ややかな声がしてきて、震える足は逃げるなと言っているみたいに動こうとはしない。


私は膝で拳を握りしめ、ホームルームを待っていると


「美桜ー!またクラス離れちゃったけど大丈夫そ?」
「なんかこのクラス雰囲気凍ってね?」


小学校からの仲である高橋琴子(たかはしことこ)と、渡橋文哉(わたはしふみや)が私の所まで来てくれた。


青ざめた顔の私を見るやいなや、琴子は私の手をぎゅっと握ってくれて、


「無理なら保健室、一緒に行こうか?」


そう目を合わせてくれた。不安感が手の温かさで不思議と消えていき、私が不器用に微笑み大丈夫だよと言うと、本当に?と見つめられる。


「こいつが大丈夫なら大丈夫なんだろ?まぁ琴子は暇だろうし昼には顔出すから、無理なら行けよ」
「暇ってなによ!まぁ……暇だけど」
「じゃあ正解じゃん」


文哉と話す琴子は女の子の顔をしてきて、でも楽しそう。琴子は小学校の頃から文哉の事が好きで、何だか見ているこっちが嬉しくなってしまう。


私の頭を勢いよく撫でた文哉はクシャッと笑って、


「俺らがいるから」


と、八重歯を見せた。


何度私はこの人達に助けられるのだろうか。感謝と同じくらい、申し訳ない気持ちが膨らんでしまう自分が大嫌いだ。


小学校のイツメンに、そうちゃんもいた。


もし生きていればここに居たはずのそうちゃん。もう一度話せるなら謝りたい。


でもそんなことありえないと……あの時までは思っていたーーー


そうちゃんのお墓は子供が行くには少し遠い所にある。でもそこはおばあちゃん家にとても近い場所にあって、夏休みにおばあちゃん家に行くのが恒例行事なのは都合がいい。
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