天国と繋ぐ携帯電話
2年生になった年の7月後半。
私はひとりで父方の祖父母の家に向かった。
「あらぁ美桜ちゃんいらっしゃい。大きくなったねぇ」
「孝典にそっくりだべな。目元は花子さんによう似とる」
家に着くと、おばあちゃんとおじいちゃんは笑顔で出迎えてくれて、私の為にと掃除してあった元お父さんの部屋に笑顔で案内してくれた。
お父さんが亡くなって恨まれてると思っていたけれど、そんな事全然なく、なんなら
「美桜ちゃんは孝典によく似てるから顔を見ると嬉しくなる」
そう、夏休みには絶対に来てくれと言ってくれる。
元お父さんの部屋だという場所には本棚に敷き詰められた漫画と勉強机、青い布団のベッドがある……大人のお父さんじゃなくて、子供の頃のお父さんが敷き詰められているような、違和感が残る部屋だ。
ここには死ぬ前もちょくちょく来ていたらしく、所々に大人のお父さんの名残がある。
おばあちゃん曰く、ここに来る度に手紙を書いていて、恥ずかしいからと内容までは教えてくれなかったのだとか。
探してくれと頼まれたけど、怖くて探せてはいない。
もしやり残した事とかあったら……もし妬みごとが書いてあったら……。
私は頭を勢いよく振り、カバンの整理をすることにした。すると、カバンの中に紛れていたのは進路先を決める用紙。
人の未来を奪った私が未来を見てもいいはずがない。
私は進路表をカバンに押し込み、そうちゃんのお墓参りに行くことにした。
木造建ての一軒家が並んだ、人の声よりも蝉の声が大きい狭い道を歩いていくこと数十分。
広いお寺の敷地内にそうちゃんのお墓はある。
お墓に来る度に顔は思い出せるのに、あの優しい声だけが思い出せない。人は声から忘れると聞いたけどそれは本当らしい。
家から持ってきた線香と仏花を持って、お墓に向かった。いつもはこの時期に来る人はいないみたいで、お花も線香もない。
今日も一番乗りなのかと思っていたがーーー
「なにこれ」
そこにはお母さんが昔に使っていたガラケーと呼ばれる古い携帯電話が置いてあった。
私はひとりで父方の祖父母の家に向かった。
「あらぁ美桜ちゃんいらっしゃい。大きくなったねぇ」
「孝典にそっくりだべな。目元は花子さんによう似とる」
家に着くと、おばあちゃんとおじいちゃんは笑顔で出迎えてくれて、私の為にと掃除してあった元お父さんの部屋に笑顔で案内してくれた。
お父さんが亡くなって恨まれてると思っていたけれど、そんな事全然なく、なんなら
「美桜ちゃんは孝典によく似てるから顔を見ると嬉しくなる」
そう、夏休みには絶対に来てくれと言ってくれる。
元お父さんの部屋だという場所には本棚に敷き詰められた漫画と勉強机、青い布団のベッドがある……大人のお父さんじゃなくて、子供の頃のお父さんが敷き詰められているような、違和感が残る部屋だ。
ここには死ぬ前もちょくちょく来ていたらしく、所々に大人のお父さんの名残がある。
おばあちゃん曰く、ここに来る度に手紙を書いていて、恥ずかしいからと内容までは教えてくれなかったのだとか。
探してくれと頼まれたけど、怖くて探せてはいない。
もしやり残した事とかあったら……もし妬みごとが書いてあったら……。
私は頭を勢いよく振り、カバンの整理をすることにした。すると、カバンの中に紛れていたのは進路先を決める用紙。
人の未来を奪った私が未来を見てもいいはずがない。
私は進路表をカバンに押し込み、そうちゃんのお墓参りに行くことにした。
木造建ての一軒家が並んだ、人の声よりも蝉の声が大きい狭い道を歩いていくこと数十分。
広いお寺の敷地内にそうちゃんのお墓はある。
お墓に来る度に顔は思い出せるのに、あの優しい声だけが思い出せない。人は声から忘れると聞いたけどそれは本当らしい。
家から持ってきた線香と仏花を持って、お墓に向かった。いつもはこの時期に来る人はいないみたいで、お花も線香もない。
今日も一番乗りなのかと思っていたがーーー
「なにこれ」
そこにはお母さんが昔に使っていたガラケーと呼ばれる古い携帯電話が置いてあった。