桜記念日

空の上から

桜の季節は苦手だ。

日本人としては、こんなことを言ってはいけないのだろうが。

この季節になると、亡くなった両親を思い出す。

1回目は、まだ私が中学生だったとき。

最愛の母を子宮頸がんで亡くした。

母は看護師だった。

母が多忙ゆえ、普通の子供のように、両親と旅行に出掛けたことも、遊園地に出掛けたこともない。

ただ、看護師として、懸命に目の前の生命を救うことに尽力する姿勢が、誇らしかった。

だからこそ、医学部への進学率が高い高校を選んだ。

高校合格を報告した時、頭を撫でてくれたこと。

「大丈夫。

きっと上手くいくわ。
貴女は、私の血を引く私の娘なんだから。

私なんてとっくに超える、いい医療従事者になれる。

私は理名を信じてるわ」

最初で最後になるかもしれない、母から娘への言葉を掛けてくれたこと。

今でも鮮明に思い出せる。

もう、あの頃から18年は経っているというのに。




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