桜記念日
2回目は、2年前。

丁度研修医2年目を終えた頃だった。

「勉強熱心だな、君は。

君みたいな子が今どき珍しいよ」

話しかけてきたのは、私の医学部時代の先輩、栗沢 慎也(くりさわ しんや)さんだ。

循環器内科医で、私の指導医でもある。

「まだまだです、私なんて。

慎也先輩と、貴方の彼女の麻未(まみ)先輩みたいな医者になれるように頑張らないといけませんから」

麻未先輩。

彼女も私の指導医だ。

両親が亡くなり、祖母の元に身を寄せたという彼女。

彼女から壮絶なネグレクトを受けたという。

彼女自らが施設に身を寄せるまで、それは続いた。

学校にもろくに通わせて貰えなかったというのを聞いたときは衝撃だった。

何度も自らの生命を絶とうと、リストカットを試みた痕が腕にいくつも残っている。

慎也と出会い、今はすっかり前を向いて、希死念慮を抱くことは一度も無いという。

私の母や私の親友たちとは違うベクトルで、強い人だ。

私もそんな人になりたい。

< 2 / 15 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop