桜記念日
父親からの手紙を、慎也先輩から受け取った。

自分がこうなることを見越して、私と拓実にそれぞれ手紙を書いていたという。

『理名へ

色々苦労をかけてすまなかったな。

鞠子が見れなかった分、理名の花嫁姿を目に焼き付けてから鞠子の待つ空の上に行こうと思ったんだがな。

それは叶わなかったようだ。

理名が今、この手紙を読んでいるということは、そういうことなのだろうから。


……慢性心不全を内緒にしていたことも、すまなかった。

せっかく医者になったんだ。

いつまでも娘に苦労をさせる父親ではいけないからな。

理名は拓実くんと幸せになるんだぞ。

本当は、彼にお義父さんと呼んでもらいたかった気持ちもあるがな。

拓実くんの両親にささやかな結婚祝いも渡してあるのと、俺の部屋の本棚にアルバムがある。

貴重な家族3人の写真も何枚か収めてあるから、
挙式のプロフィールムービーにでも使ってくれ。


元気でな、理名。

岩崎 隆文』

< 4 / 15 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop