桜記念日
「……理名。

そこにいるだろうと思った。

俺も、理名のご両親に伝えるから、少し待てるか?

そしたら帰って一緒に風呂入るか。

そんな薄着で、冷えたろ。

挙式前日に風邪ひかれると困る。

明日は、桜の木の下、ガーデンウェディングにするんだからな」

「んも、拓実ったら。

式に影響すると困るから、一緒にお風呂入るだけよ。

イチャイチャ無しで寝るんだからね。

それが約束出来るなら、独身最後だし、彼氏のワガママ聞いてあげる」

「ったく、素直じゃないんだから。

まぁ、そういう奥さんに惚れたんだ。

惚れた弱み、ってやつだな」

そう言って私に微笑んだ拓実は、
私の、両親の墓前にかなり長く手を合わせていた。

「一言じゃなくない?
拓実」

「俺のタキシード姿も、理名の花嫁姿も、ちゃんと見ていてほしいじゃん?

それに、まだまだ頼りないかもしれないけど、大事な1人娘を任されたんだ。

ちゃんと幸せにするから、ってことだけは伝えたくてさ」

「そういうこと、さり気なく言うの反則だって。
いい旦那すぎて、私には勿体ない」
< 6 / 15 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop