ハニーレモンとビターチョコ〜双子の兄の溺愛注意報〜


 今度はあの意地悪な笑顔ではなかった。

 稀に見せる、亜蘭くんが本気になった時の真剣な表情。
 運動会で徒競走やリレーを走る前と同じ表情をしてる。

 直前まで余裕そうに笑っていたりするのに、構えた瞬間表情が切り替わるの。
 その時の亜蘭くんは、普段の百倍カッコいい。


「悪かったよ、莉茉見てるとからかいたくなるからさ。――でも本気、俺はマジで莉茉が好きだ」


 えっ、えっ、嘘でしょ……?


「本当は莉茉に会うために戻ってきたんだ」

「ほ、本当に……?」

「こんなことで嘘つかねぇよ」


 今の感情を例えるなら、カカオ七十パーセントのチョコレートだと思っていたのに、食べてみたら苦味ゼロのスイートチョコレートだったって感じ。


「なぁ莉茉、俺の彼女にならねぇ?」

「……っ」


 あの亜蘭くんが、本当にわたしのことを……?
 どうしよう、でもわたし――


「莉茉ちゃんは渡さない」
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