ハニーレモンとビターチョコ〜双子の兄の溺愛注意報〜
わたしはお兄ちゃんができるの楽しみだったし、会ってみたらとんでもないイケメンだったからめっちゃテンション上がってたんだよね……。
「莉茉ちゃんは俺とも父親とも仲良くなろうとしてくれて、いつも明るくて優しくて。スイーツが大好きで幸せそうに食べてる笑顔がものすごくかわいくて――いつの間にか好きになってた」
「そう、だったの……」
「莉茉ちゃんのことが好きになる度に、自分がこんなにも独占欲が強いんだって気付かされた」
「ど、どくせんよく?」
「莉茉ちゃんのこと、独り占めしたいってこと」
亜蘭くんにも同じことを言われた。
あの時もすごくドキドキしたけど、今は胸がきゅうっとなって何だかちょっぴり苦しい。
「莉茉ちゃん」
「ふぁいっ!?」
変な声出ちゃった……!
「安心して。莉茉ちゃんの嫌がることはしないから」
「依蓮くん……」
「でも、三秒だけいいかな?」
「え?」
そう言うと依蓮くんはぽすん、とわたしの肩に頭を寄せる。
依蓮くんの柔らかなハニーブラウンの髪の毛がわたしの肩に触れている。
「……っ!!」
ぶわわっと一気に体温が上昇していくのを感じた。
三秒ってこんなに長かったっけ……?
「……ほんとに俺、余裕ないな」
「え?」
「何でもない。ありがとう」
そう微笑んで依蓮くんはパッと離れた。
何か呟いた言葉は聞こえなかった。
わたしの心臓はまだドキンドキンと激しく鼓動を刻んでいる。
依蓮くんは時々ビターな表情を見せる。
いつもは優しい甘さで包み込んでくれるのに、酸味の中に苦味が隠れたレモンみたい。
ずっと一緒に暮らしてきたのに、わたしは依蓮くんのこと全然知らなかったのかもしれないと思った。