ハニーレモンとビターチョコ〜双子の兄の溺愛注意報〜
例えるなら、スポンジケーキが膨れ上がる前にへなっとしちゃった感じかな。
恋として芽吹くにはまだ早かった。
でも確かにわたしの初恋だった。
「それより今は高校生になってお小遣い増えたし、もっと色んなスイーツを食べ歩きたいんだよね〜!!」
「結局色気より食い気ってことね。莉茉らしい」
ココちゃんは呆れて肩をすくめていた。
* * *
体育の授業。
わたしは依蓮くんから借りたブカブカの体操服を着ている。
ジャージはダボダボだし、ハーフパンツはキツめに紐を縛って一回折り曲げてずり落ちないようにしてる。
ほんのり香る良い匂いは依蓮くんのものだ。
香水なのかわからないけど、依蓮くんってフレッシュなレモンの香りがするんだよね……。
「うふ、依蓮くんに包み込まれてるみたい……♡」
「変態か」
「推しジャージしてるとみんなこうなるんだよ」
「なんだよ推しジャージって。彼シャツみたいに言うな」
「えへへ〜」
なんてヘラヘラ浮かれていたわたしは、こちらに向かって飛んでくる飛来物に全く気づいていなかった。
「――危ない、莉茉!!」