月と空と太陽と
丁度帰る方向が同じだったので、太陽が月子を送るになった。

夜になると ほんの少しだけ肌寒かった。

並んであるくが、無口な太陽と二人だと あまり会話がはずまない。

月子は すこし居心地の悪さを感じていたら、いきなり太陽が話し出した。

「椎名って 蒼空のこと好きなのか。」

えっ!?

びっくりして太陽を見る月子。

太陽は表情も変えず、前を向いたまま黙々と歩く。

「なんでっ?そんなこと……。」

いきなりのカウンター攻撃にしどろもどろの月子。うまく言葉が出てこない。

「なんとなく、そう思った。」

太陽は月子を見て 笑う。

「蒼空はいいやつだよ。」

「……知ってる。」

うん、いいやつ過ぎて困るんだもん。
だから…… 友達でなくなるのがつらいのだ。

月子は下を向いて歩く。

「自分の気持ち伝えないのか?」

月子は下を向いたまま黙りこんだ。

中学の時は 蒼空とはひと言も話せなかった。
それが 今は学校帰りに一緒に寄り道する間柄にまでなったのだ。

「今の友達の関係を壊したくないの。」

ぽつんと月子は言った。
これは本心だ。

太陽は ちょっと肩をすくめて

「そんなものなのか?よくわかんないけど。」

と 無表情に言う。

「そんなキレイごとじゃないんじゃねえの?恋愛って。」

知らんけど、と 付け加えて太陽は笑う。

そうかもしれない。
キレイごと、と言われればその通りだ。
だけど 今は キレイなままでいたい。
どろどろとした感情に囚われたくない。

蒼空の笑った顔をそばで見ていたい、ただそれだけだ。

「今のままがいいの。今は……。」

月子はうつむいたまま そう告げる。

太陽はそれ以上は何も言わなかった。

「おねがい、このことは 高階には言わないで。」

月子は立ち止まり、泣きそうな声で訴える。

しばらく太陽は じっと月子を見つめていたが、

「ああ、わかった。」

そう言って 歩き出した。

二人はさっき話していた体育祭の種目のことについて、また話し始めた。

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