月と空と太陽と
ホームルームで 体育祭のことについて話し合いが始まった。

みんなそれぞれに参加したい種目を選んでいくが、最後までリレーのメンバーについて クラス内で揉めた。

女子のリレーメンバーの志願者が少なく 難航したのだ。

「えー、それでは走るタイムの速い女子を推薦したいのですが 皆さんどう思いますか?」

クラス委員長が発案する。

異議なーし! と クラスの男子。

嫌な顔をする数人の女子。

その嫌な顔をした女子の中には月子もいた。

「月子 何気に走んの速いもんねー。」

こそっと未奈が月子に耳打ちする。

月子は 顔をしかめた。

委員長は、次々と足の速い女子の名前を読み上げ メンバーが決まっていった。
名前呼ばれませんように……と 月子は目をつぶって祈る。

「えー それでは 最後に椎名月子!」

げっ。……免れたと思ったのに!

月子は露骨に嫌な顔をする。そして

「えー 私 走るのは速いかもしれませんが、バトンの受け渡しが下手なので みなさんに迷惑がかかります。
どうか、他の人にしてください。」

すがる気持ちで 委員長にそうお願いした。

すると、

「あー じゃあ 俺たち陸上部が特訓するんでー、任せてください。」

と リレーメンバーの蒼空がニコニコして言うじゃないか。

げげっ。なんてことを提案するんだっ。

振り返って蒼空を睨む。

「いやですっ。私 リレーなんて無理ですぅー……。」

月子の訴えも虚しく、委員長が「じゃあ椎名で決まり!」と声を張り上げる。
みんな拍手で月子のメンバー入りが決定した。

愕然とする月子。

気の毒そうに月子を見る未奈。

ニコニコと上機嫌な蒼空。

「ま、がんばろうや。」

と、リレーアンカーの太陽がポンポンと月子の肩を叩いた。


***

その日の放課後、蒼空と太陽によるリレーの特訓が始まった。

リレーの順番では、蒼空が月子にバトンパスし 月子がアンカーの太陽にバトンパスをする。

まず 試しに その順番でバトンパスをしてみた。

「うーん。月子は バトン受け取る時に後ろ見すぎてスピード遅くなるよな。」

「受け取るタイミングもだけど、手の出し方が悪い。」

「うん、あれじゃ落とす可能性もあるな。」

「角度が悪い。」

蒼空と太陽は 二人で分析を始めた。

月子はバトンを受け取る時に きちんと受け取れるか自信がなくて いつも もたもたしてしまうのだ。

その日は 走る練習ではなく、ひたすらバトンパスの練習をして終わった。
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