雷乙女と狼公の結婚 王子の元恋人が婚約破棄を3回食らった公爵と結婚するとこうなる

 後日、王宮からフセルフセス公爵の元に、ルノー王子脱走について連絡が届いた。どうやらルノー王子は東離宮で向精神薬のような薬剤を大量に飲んだようだった。その影響で凶暴化した、というのが王宮の医師や研究者の見解だった。
「ルノー殿下は、穏やかでお優しい方でしたから」
 そう言ったのはトリエルノだった。しかし同時に、兄たちへのコンプレックスや同い年でありながら自分よりも華々しくその能力を振るうシルハーンに嫉妬している節があったようだ。そう言った部分は、トリエルノも元恋人としてよく承知していた。
「今回の件を受けて殿下の謹慎期間が3年延びたようだが、陛下の即位記念や誕生日に合わせて恩赦が出るはずだ」
 シルハーンはそう言って、この一件に少なからず責任を感じているらしいトリエルノを慰めた。あの戦いのさなかに生えていた耳や尻尾は闘志を刺激されたときにだけ出るものらしい。今はすっかりなりを潜めている。
「それで、あなた宛てに色々な家から手紙が来ている」
 トリエルノ・ダズリン・フセルフセス様、とあて書きされた手紙をカルから受け取って、シルハーンが困ったように笑った。今回の一件で、王宮から来た役人がトリエルノの活躍を国王に報告したことで、彼女は王都で時の人になっているらしい。けれど当の本人はどこ吹く風で、適当に手に取った封筒を開いてシルハーンに寄りかかった。
「今週末のパーティーのお誘いですって」
 目の前にある手紙の束が全てそのたぐいだと分かると、遊びの誘いなどこれまでろくに受けてこなかった社交界の二大問題児は、互いの顔を見合わせて、それから声を上げて大いに笑った。
< 4 / 4 >

ひとこと感想を投票しよう!

あなたはこの作品を・・・

と評価しました。
すべての感想数:1

この作品の感想を3つまで選択できます。

この作家の他の作品

創痕の花嫁と冥府の王

総文字数/17,294

恋愛(純愛)2ページ

表紙を見る

この作品を見ている人にオススメ

読み込み中…

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop