好きが故に欺いて〜罠に嵌められた私を待ち受ける甘い愛〜

　会社で見る姿とは別人の彼の姿に、自然と口角が上がってしまう。


「可愛いのを崩すのは申し訳ないけど……食べましょうか」
「そうだな、この可愛さに感謝して食べよう」
「ふふっ、いただきます！」

　うさぽんが印刷されたかわいらしいご飯を崩すことに、うさぽん好きとして抵抗感を感じてしまう。
　口に運ぶ手前で思わず手が止まったが、ぐっと息をのみ口に運んだ。

　「おいっしい！　え、可愛い上に美味しすぎる！」

　見た目のかわいらしさだけでなく、口にした美味しさに自然と声が高らかになる。視線を感じて顔を上げると、私を見つめる千歳さんは不意にふわりと笑った。
　不意打ちの笑顔に、どきっと心臓が跳ねる。

「ご、ごめんなさい。ちょっとはしゃいじゃいました」
「……ふっ。かわいいな」

　ぽつりと囁いた言葉に、顔が一気に熱くなる。
　千歳さんが零した「かわいい」が、うさぽんに向けての言葉なのか、私に向けられた言葉なのか、わからなくて目をそらすことしかできなかった。