好きが故に欺いて〜罠に嵌められた私を待ち受ける甘い愛〜
恥ずかしさから逃げるように話題を振る。
「ち、千歳さんは、うさぽんが好きだと公言しないんですか? 男性社員で、かわいいキャラクターが好きって公言している人もいますよ。なんか逆に女性うけいいとか言ってたような」
わが社はイベントやセールス・広告プロモーションの企画をする会社だ。
キャラクターを使った広告プロモーションを打つことも多い。そのため、男性社員でもかわいいもの好きと公言して、それを武器に営業をしている人もいるらしい。
なので、千歳さんがひた隠しにする理由が気になったのも本当だった。
「あー。佐藤とかは、顔が塩顔系男子で、そういう風に可愛い系が好きっていうのに、納得感があるだろ?」
佐藤というのは、可愛いものが好きと公言している同じ企画部の社員で私と同期。確かに彼は、目がクリっと大きくて、笑うと目じりが下がり優しい顔をしている。
「まあ。かわいい系の顔してますね」
「俺は、その……どちらかというと話さないと怖がられることも多いし。こんな顔の奴が可愛いもの好きって言ったら、引かれるだろ」
確かに千歳さんは、どちらかというと強面の部類ではある。
でも、そんな千歳さんが可愛いものが好きだなんて。ギャップにやられてしまう女性は多そうなのに。
現に私は何度もドキッとしてしまっている。
「そんなことないですよ! かわいいは正義です!」
否定するために、声に力が入る。千歳さんは驚いたように目を丸くしてから、次の瞬間には柔らかく笑った。
「ははっ、ありがとう」
お礼を言われるようなことを言ったつもりはないのだけれど、彼の柔らかい笑顔を見ると、何故か私の方まで嬉しくなった。
今日分かったこと。うさぽんの話となると、千歳さんは饒舌になる。
推しのうさぽんが溢れる空間で、うさぽんの魅力を語るのは幸せな時間だった。