好きが故に欺いて〜罠に嵌められた私を待ち受ける甘い愛〜

「だめか、だめじゃないかを決めるのは、香坂じゃないだろ? 自分の可能性を否定して立ち止まるな」
「……」
「無理にとは言わない。だけど、頑張ってみてもいいんじゃないか?」

 挑戦したいと思っていたけど、無理だと決めつけて諦めていたことだった。
 千歳さんの言葉は、踏み出せなかった一歩を後押ししてくれた。

 「……私も、頑張ってみたいです」
 「ああ、応援してる」

 柔らかな笑顔と共に放たれた言葉が、まっすぐに心に響いた。



 その日、家に帰宅してもずっと気持ちが高揚していた。
 コラボカフェで実際に感じたお客様のまぶしいような笑顔。店内に轟く歓声。

 ずっと胸の中に残って離れない。

「自分の企画で誰かの笑顔につながるなんて、素敵だよね」

 仕事欲にも火が付いたようで、胸の高鳴りが消えることはなかった。

 同時に、振り返ると千歳さんのことばかり考えていた。


 千歳さんの柔らかく笑った表情が、目に焼き付いて離れなかった。




 
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