好きが故に欺いて〜罠に嵌められた私を待ち受ける甘い愛〜
「え、そんなこと……ないと思うよ?」
誤魔化そうとするが、言葉に詰まってしまう。
一緒にコラボカフェに行ったことは、秘密事項だったので真実は言えなかった。
「莉乃先輩はだめですよ?」
「え?」
佐伯さんの言葉の意味が理解できず、私は聞き返す。
「千歳さんは、私が狙うんで。もし気があるならダメですよ?」
「え、狙うって……」
「そのままの意味です。千歳さんって怖い人かなって思ってたけど、意外に優しいですよねー。最近声を掛けてもらうことも増えて、あっちも私に気があるっぽいんです。ふふっ。なによりかっこいいし、いいかなーって」
「そ、そうなんだ」
佐伯さんの言うことには、心当たりがあった。
『佐伯のことなら、俺も協力するからさ』
確かに千歳さんは、そう言ってくれた。
今までの様に私に仕事を押し付けないように、千歳さんは佐伯さんの進捗状況を確認したり、仕事量を調整してくれていたのだ。
そのおかげで、佐伯さんから残業を押し付けられることは、あの日以降なくなっていた。
安堵していたのに、まさか千歳さんの優しさのせいで、佐伯さんが彼に興味を持ってしまったなんて。
予想外の展開に胸の奥がずきっと痛む。