好きが故に欺いて〜罠に嵌められた私を待ち受ける甘い愛〜
「いや……か?」
返事ができず黙り込む私の顔を覗き込む。彼の瞳に吸い込まれるように、勝手に口が開いた。
「……いや、じゃないです」
「なら決まりだな。香坂の時間は俺が予約した」
ふわりとした笑顔を見せた。
その瞬間、心拍数が跳ねあがる。
こんな些細なことでもドキドキして……。
千歳さんのことを目で追ってしまうし、飲みに行こうと誘われたら胸が弾んで仕方ない。
彼の笑顔をみたら、胸のドキドキが止まらない。
かっこいい千歳さんと私は全く釣り合っていない。
それに、佐伯さんという強烈なライバルまで存在する。
この胸の高鳴りも、嫉妬で荒れた心も。
その感情に気づかないふりをして、どくどくと鼓動が早くなった胸を押さえた。