好きが故に欺いて〜罠に嵌められた私を待ち受ける甘い愛〜
「最近、朝早くに出社してないか?」
「はい。企画書を見直したくて」
「香坂は真面目だなー。みんな始業時間内にやってるよ?」
「いいんです。千歳さんに背中押してもらって、コンペに参加しようって決めて……やる気が沸き起こって、なんだかとても楽しいので」
自分で企画から考えるなんて初めてだったが、知見が広がり前より充実しているような気がしていた。
それも千歳さんの言葉に後押しされたからだ。
千歳さんは一杯目のビールを飲み終えると、次からはレモンサワーを頼んでいた。
喉を鳴らしながらおいしそうに飲むので、2杯目は真似をしてレモンサワーを頼んだ。
爽やかなレモンの香りが喉を潤す。
ほどよく酔いがまわり、いつもより口数が多くなる私の話を、相槌を打ちながら聞いてくれた。
会話をしながら笑いあうと、多幸感が心を満たす。
流れ去るように時間が過ぎる。
千歳さんはお酒に強いようで、顔色が全く変わらない。
私だけがお酒に負けたような気がして、ほんのりと染まった頬を両手で包み込んだ。
お店を出ると夜風が、酔いで火照った体をなでた。
その心地よさに、勢いよく足を踏み出すと、力がガクッと抜けて体がよろけた。
次の瞬間。崩れ落ちそうになった私の体を千歳さんが支える。
抱え込まれた腰に彼の手の体温が広がっていく。