好きが故に欺いて〜罠に嵌められた私を待ち受ける甘い愛〜
5、向けられる敵意と罠
次の日、会社で千歳さんの姿が視界に入ると、自然と顔がにやけてしまう。
話ってなんだろう。
昨夜の甘い記憶が蘇るたびに、期待せずにはいられない。
思い出すたびに、口元は緩む。
同僚に悟られないように、必死にポーカーフェイスの鎧を身につけ仕事に取り組んだ。
コンペに出す企画書も、大幅に修正を加えて完成した。
「課長、私もコンペに挑戦します。よろしくお願いします」
デスクに座る課長に企画書を手渡す。「はい〜」と軽い返事だけで終わり、なんだか呆気なかった。
けれど、私の心は晴れやかだった。
頑張って企画書を提出することができた。
達成感で満たされて胸がいっぱいになる。
みんなより一足早くお昼休憩を終えて、誰もいない中パソコンへと向かっていた。
企画書は無事提出することができた。
不思議と仕事に対する威力も上がっていた。
「莉乃先輩、なんか今日嬉しそうですね?」
背後から甘ったるい声がする。
振り返ると、佐伯さんにまるで私の表情を審査するように凝視された。
「え、そうかな?」
「なにかいいことありました?」
「……いや、別にないよ? あ、企画書を無事出せたからかな?」
核心を突くような質問に心臓がどきりとした。