好きが故に欺いて〜罠に嵌められた私を待ち受ける甘い愛〜
「私、言いましたよね⁉ 千歳さんを狙うって。それを知ってて、千歳さんと飲みに行ったんですか?」
「いや、えっと……」
「莉乃先輩、私に嫌がらせしたいんですか⁉」
佐伯さんの叫びに近い声は、さらに声量を増していく。
反射的に周りに視線を配る。
他の社員はまだお昼休憩から戻ってきていないようで、この場には私と佐伯さんしかいない。
私しかいないからなのか、佐伯さんは感情のままにぶつけてくる。
「佐伯さん、お願いだから、落ち着いて?」
「落ち着けないです! 納得いくように説明してください!」
一向に落ち着く気配のない佐伯さんに、お手上げ状態だった。
どうしていいかわからず頭が真っ白になる。
そんな私に、佐伯さんは一瞬で表情を変えた。
にやりと口角を上げて、背筋に寒気が走るような嫌な含みい笑いを浮かべる。