好きが故に欺いて〜罠に嵌められた私を待ち受ける甘い愛〜
 
 佐伯さんから引き継がれた仕事は、明日の企画会議に使われる開発中の商品のリサーチ資料だった。
 今後の広告戦略を考えるもとになる資料で、これがなくては会議が成り立たない。

 
 共有フォルダをクリックすると、思わず目を見開いた。ほとんど手をつけられてないのだ。
 
「はあ、」

 大きなため息も出てしまう。
 明日の会議に絶対に必要な資料。今日中にできていなければいけないのに、進捗状況の相談もなかった。

 佐伯さんを責めたい気持ちが溢れるが、彼女の指導係はわたしだ。
「ちゃんと私の方から、進捗状況を聞くべきだったかな……」

 怒りの矛先を自分へと向けて、早々に資料作成に取り掛かった。

 作業を進めていると、企画担当者の名前が視界に映る。
 同時に心が深く沈んだ。
 
 
「これ、千歳さんが担当じゃん。遅れたら怒られるな……」

 こんなにも落胆するには理由があった。
 佐伯さんから託されたのは、千歳さんが担当するクライアントだったからだ。
 
 
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