好きが故に欺いて〜罠に嵌められた私を待ち受ける甘い愛〜
佐伯さんの表情の意味が理解できず、不思議に思っていると、その答えはすぐに分かった。
男性社員たちの声が背後から聞こえたからだ。
「おいおい、どうした? こっちまで声聞こえてきたよ?」
ハッとして佐伯さんに視線を戻した時には、彼女は涙を目に浮かべ、ぽろぽろと泣き出していた。
それはまるで男性社員が来たのを待っていたかのように。
嗚咽混じりに泣く佐伯さんを、男性社員たちは取り囲み、こぞって心配をする。
私と佐伯さんを交互に見て、なにごとかと探っているようだった。
ちゃんと説明しないと。危機感を感じて瞬時にそう思った。
けれど、なんて説明すればいいのだろう。
説明に迷っているうちに、口を開いたのは佐伯さんだった。
「……莉乃先輩が!」
佐伯さんは思い切り声を張り上げた。みんなの注目が自分に集まったことを確認すると、言葉を続ける。
「莉乃先輩が、コンペに出した企画書……私のアイディア盗用したんです!」
唐突すぎる発言に、耳を疑った。
彼女は何を言っているのだろう。理解ができず思考が停止する。