好きが故に欺いて〜罠に嵌められた私を待ち受ける甘い愛〜
佐伯さんは目に涙をためてこちらをにらみ続ける。その目つきに動悸と身震いがした。
「な、なんのこと⁉」
事実に反することを言われて、思わず反論の声が大きくなる。
佐伯さんのアイディアを盗んだ事実なんて一切ない。
そればかりか、佐伯さん本人がコンペに関心がないことだって知っている。
ただ私を悪者にしようと目論んでいるとすぐに頭が理解した。
「一体どういうことだ?」
仲裁に入るように、男性社員たちが割って入る。
だけど、みんなが私に向ける視線は冷たかった。
泣きじゃくる佐伯さんに、皆の同情が集まっているのが見て取れた。
佐伯さんは泣きつくように勝手に話し出す。
「えっと、莉乃先輩がコンペに出した企画あるじゃないですか……あれ、事前に私が莉乃先輩に相談してたアイディアなんです」
「そんな嘘言わないで!」
泣きながら話す佐伯さんに、間髪入れずに言い返した。
さすがに、嘘を吐かれては黙っていられない。