好きが故に欺いて〜罠に嵌められた私を待ち受ける甘い愛〜
「香坂さん、待てって。佐伯さんこんなに泣いてんだよ? 誤解があるのかもしれないけど、まずは佐伯さんの話聞くから」
「誤解も何も、本当に盗用なんてしてないです!」
「いや、ほら。相談されたことが頭に残って、知らず知らずのうちにアイディア盗んでしまったってこともあるから、な?」
嫌な予感がした。何度否定しても、明らかに佐伯さんの肩を持っていたからだ。
騒ぎが大きくなり、次々と他の社員も会話に混ざりだす。
人が多くなると、佐伯さんはさらに泣きながら、事実ではないことを平気で言い放った。
「黙ってようかと思ったんです。莉乃先輩にはお世話になってるから。盗まれても仕方ないかなって」
「違います! 私のアイディアです。盗用なんてしてません」
何度も反論した。でも無駄だった。
この虚言には証拠がない。
故に、嘘だという証拠もないのだ。
白い視線を全身で浴びているのを感じた。
みんな完全に佐伯さんの味方なのだ。
この場にいる全員が、私のことを疑っている