好きが故に欺いて〜罠に嵌められた私を待ち受ける甘い愛〜

「莉乃先輩、大丈夫ですか? 顔色真っ青ですけど」

 白々しく心配するような言葉を並べてるが、表情は嬉しそうに微笑んでいる。

 誰のせいで!
 そう言い返したかったけど、今の状況で言い返すことは悪手に回る。そう判断して言葉を飲み込んだ。


「佐伯さん、あなたのアイディアなんて盗んでない。佐伯さんはコンペの企画書なんて考えてもなかったじゃない!」
「あー。先輩? 事実かどうかなんて、どっちでもいいんです。今大事なのは、みんなが莉乃先輩より私のことを信じてるってことです」

 甘ったるく話す彼女の声に眩暈がした。
 私を陥れたことに、罪悪感など微塵も抱いていないようだった。

 
「あ、そういえば、千歳さんにデート誘われました!」
「……えっ⁉」

 思わず大きな声がこぼれた。だって、佐伯さんと千歳さんが……⁉
 信じられなかった。いや、信じたくなかったんだ。

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