好きが故に欺いて〜罠に嵌められた私を待ち受ける甘い愛〜

 

 千歳さんの体温を感じたあの夜。
 想いが通じ合っているのだと思っていた。

 私が千歳さんを好きになってしまっていたように。
 彼も私を好きなのだと。


『好きだ。付き合って欲しい』

 そう言ってくれると期待していた。
 私が勝手にそう思い込んでいただけだった。

 そうだ。私たちは酒を交わした夜にキスをしただけの関係だ。
 酒の酔いの勢いだったのかもしれない。
 なのに、私は何を期待していたんだろう。

 そう考えたら無性に寂しくなった。
 じんわりと目頭が熱くなる。


 現実を叩きつけられても尚、あの夜の甘い言葉を、酒のせいだと片づけたくなかった。
 

 しかし、私はさらにどん底に突き落とされる。
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