好きが故に欺いて〜罠に嵌められた私を待ち受ける甘い愛〜
千歳さんはキャリア採用で4月から企画部へとやってきた。
噂によると、社長直々にヘッドハンティングしてきたエリートらしい。
来月には役職につくとの噂もある。
確かに千歳さんは仕事ができる。日々の仕事ぶりを見て、それは明白なものだった。
いくらエリートで仕事ができるとはいえ、千歳さんのことは正直苦手だ。
彫刻の様に整った顔だちと相まって、あまり表情を変えない彼は感情が見えない。
加えて淡々と話す口調には冷たさを感じて、話しかけるのを躊躇してしまうくらいだ。
数ヶ月経っても近寄りがたいという印象が拭えず、苦手意識が強いままだった。
しかし、アシスタントとして、企画担当者を選べる立場ではない。少し気が重くなりそうだったが、深呼吸をして自分の気持ちを入れ替えた。
「よし、頑張ろう」
気合を入れ直して、目の前の仕事にとりかかった。