好きが故に欺いて〜罠に嵌められた私を待ち受ける甘い愛〜
佐伯さんに頼まれるがまま、誰もいない会議室で渡された資料をテーブルに並べた。
資料に目を通すと、やはりそれは私の考えた企画書そのままだった。
本当ならば、私も当事者としてここにいるはずだったのに。
だけど、無関係となったわたしは資料をテーブル上に並べる雑用だけ。
悔しさで自然と手の力が強くなってしまう。
「先輩、ありがとうございますー。あとはわたしがやるんで~」
ほとんど配り終えた後で、横からすいっと残りの書類を取られた。
そしてタイミングよく、この企画で動くメンバーたちが会議室に入室してきた。
「お疲れさまー」
「お疲れ様。佐伯さん、配っといてくれたんだ。ありがとう」
「発案者なのに、雑用までありがとな」
何の躊躇いもなく佐伯さんはにこりと微笑む。
「いえー。早めに準備しときました」
彼女は自分の手柄の様に答えた。
ずっと押し殺していた彼女への怒りが押し寄せる。
彼女に手柄を取られるのは何度目だろう。
けれど、ここで私がやりました。と声を上げたところで、何の意味も持たないことはわかっている。
どうやら自分の意思をどこかに置き忘れてきたらしい。
言い返そうとする気力さえも無くしていた。