好きが故に欺いて〜罠に嵌められた私を待ち受ける甘い愛〜

「それって、うさぽんだよな? その種類は初めて見た……。取り扱い店舗は⁉」

 食い入るように、うさぽんを見つめながら早口で捲し立てるので、驚いてぽかんと口を開ける。
 
 確かに、このキーホルダーは期間限定商品で今は流通していない。
 うさぽんが猫の着ぐるみをきており、半年ほど前に期間限定のガチャポンで手に入れたものだった。
 希少価値が高いがゆえに、フリマアプリで高額で取引されているような代物である。

 それにしても、千歳さんの食いつきに驚いて、言葉が出てこない。
 そんなわたしに気づいて、ハッとしたかのように瞬時に顔をゆがめた。そして、大きな手で顔を覆う。

「……いや、あの、取り乱して済まない」

 さっきまでの熱弁はどこえやら。声は消え入りそうなほどか細かった。

「もしかして……千歳さん、うさぽん好きなんですか?」
「……」

 返事の代わりに、こくんと頷いた。

 仮面を貼り付けたように無表情だった顔は、真っ赤に染まっている。

「かわいいですよね! うさぽん! 私も大好きなんです! ちなみにこれは期間限定なので、もうゲットできません」
「期間限定? そんなものがあるのか……」

 分かりやすくがっかりしたように肩を落とした。
 あまりに悲しそうにするので、凝視していると、私の視線に気づいた千歳さんは、再び頬を赤く染めた。

「い、いや。今のは見なかったことにしてくれ……」

 気恥ずかしそうに零す千歳さんに、今まで持っていた怖いという印象が溶けていくようだった。
 恥ずかしそうにする姿が、なんだか可愛らしい。
 そのうえ、自分の推しキャラのうさぽんを好きだという同志に出会えて、嬉しさで胸が膨らむ。
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