好きが故に欺いて〜罠に嵌められた私を待ち受ける甘い愛〜
「私も大好きなんです! このうさぽんが欲しくて、10回以上はガチャを回しました」
「……ごほっ、そうか」
千歳さんは軽く咳払いをすると、さっきまでの饒舌はなくなり、いつもの不愛想の千歳さんに戻っていた。
うさぽんを好きと聞いて、私も感情の熱が上がってしまった。途端に恥ずかしくて、静かに視線を逸らした。
しばらく何かを考えるように黙り込んでから、千歳さんはゆっくり口を開いた。
「あ……あのさ! 香坂、今週の休み予定あるか?」
「え、」
唐突な質問に驚いて短い声をあげた。
戸惑う私に向けて、少し言いずらそうに言葉を続ける。
「今月末までうさぽんのコラボカフェやってるの知ってるか?」
「あっ、はい。表通りの方にあるカフェですよね」
5周年を記念としたうさぽんとのコラボカフェが期間限定で開催されている。
世界観やうさぽんをイメージしたコラボメニューが楽しめようで、うさぽん好きとしては周知のイベントだった。
「一緒に行ってくれないか?」
「わ、私とですか?」
「さすがに一人で行く度胸も、誰かを誘う勇気もなくてだな……」
弱く微笑む笑顔を見ると同時に、気づけば頷いていた。
「私でよければ……」
返事を聞いて、安心したように優しく微笑むので、私も釣られて小さく笑った。
流れで返事をしてしまったけど、休みの日に千歳さんと出掛けるなんて。
デートってこと⁉
冷静に考えると、急に鼓動が早くなる。
「あ、一応企画のアイディアの偵察ってことにしとくか。他の人には秘密な?」
人差し指を口元に当てて、ふっと微笑んだ。
そのしぐさと妖美な微笑みに、心臓がどきりとする。
「は、はい」
胸の高鳴りを隠しながら返事をするのに精いっぱいだった。