灰色の虹職人～会社を追放されたわたしが出会ったのは、虹を作る仕事でした～

「雑誌の見本を持ってきました！」

　一人の女性がオフィスに走ってくる。他の社員はみんな自分のパソコンを睨みつけていた。

　指をキーボードに叩きつけては、コーヒーを喉に流し込んでいる。かと思えば立ち上がってハムスターみたいに歩き回っている。

「こっちにもってきて！」

　ガラスの扉から女性が顔をのぞかせた。ペチュニアだ。手招きしている。雑誌を持った女性がペチュニアの元へ駆け寄った。

　ガラス張りの会議室の中で、社員がパソコンを見ながら頭を掻きむしっていた。女性が雑誌をテーブルに置く。表紙は灰色だった。

　ペチュニアが雑誌をひったくった。

「色がないわ！」

「どこかで灰色になっちゃって」

　女性は涙目になりながら立っていた。ペチュニアが頭を掻きむしる。桃色の長い髪が毛羽立つ。

　会議室に男が入ってきた。スーツが体の一部のように染みついている。男は鼻を持ち上げながら、人差し指をペチュニアに向けた。