灰色の虹職人~会社を追放されたわたしが出会ったのは、虹を作る仕事でした~
「素晴らしい雑誌はどこ?」

「編集長」

 ペチュニアは微笑みを顔に張り付けた。雑誌を背中に隠す。

「まだ見てはいけません」

「編集長だぞ」

「ウエディングドレスと一緒ですよ」

 編集長が眉間にシワを刻み込んだ。首を傾げる。ペチュニアは微笑みを顔面に塗りたくった。厚化粧みたいだ。

「お披露目を楽しみにしてください」

 編集長のシワが伸ばされていく。口元が緩んでいった。部屋から出ていく。ガラスの壁を通して、編集長の後ろ姿が見えた。ペチュニアは微笑みの厚化粧を手の甲でこすり落とした。

「元々完成させていた表紙は?」

「データが消えています」

 ペチュニアが唇を尖らせながら目を見開いた。視線を時計に向ける。針が夜の七時を指していた。

「作り直すわよ」
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