そしてまた歩きだそう
「学校っていう社会が嫌になって、きっかけは思い出せないんだけど。なんかなにもかもやる気がなくなっちゃって」

素直に全部話した。きっかけが思い出せないのも、こんな薄い理由で5年も不登校なのも、何か言われてもいいやと投げやりになっていたのかもしれない。チカさんは「そっか」と小さく呟いて、それ以上は詮索して来なかった。

「そろそろ帰ろうかな」

2分ほどの沈黙の後チカさんが立ち上がりながらそう口にした。気がつけばチカさんと話し始めてから、2時間近く経っていた。

「また明日ね」

僕が立ち上がってから、片手を小さく振り歩き始めながらチカさんが言った。そのまた明日に驚きつつも、「うん」と返して僕も家に向かって歩き始めた。そして家に着いたが、母はまだパートから帰っていなかった。部屋に戻りまた勉強を始めたが集中出来ない。なぜかずっとチカさんのことを考えてしまう。あの「また明日」は信じていいのだろうか。ともかく明日も行ってみよう。明日は、柵の外側に居てくれますように。
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