そしてまた歩きだそう
その後、しばらく3人で思い出話や僕の記憶のことについて話した。母は、僕が姉を忘れていることをそのままでいいと思っていたが毎年4月1日にあの公園に千佳ちゃんがいることを知っていて、僕が姉の亡くなった年と同じ中学三年生の4月1日公園に行くように仕向けたのだと知った。僕のせいで2人に負担をかけてしまったことは申し訳なく思ったが、同時に僕のことをこんなに考えている人がいることは嬉しく感じた。

「おばさん、七絃くん。色々ありがとうございました」

夜19時を回りそろそろお開きにしよう、となった時に千佳ちゃんが言った。感謝なんて、僕の方がすべきなのに。

「こちらこそ本当にありがとう。また、何時でも遊びに来て」

母が笑顔で言う。さっきまでの暗い雰囲気はもうないように感じた。

「もう遅いから途中まで送るよ」

玄関に向かう千佳ちゃんを急いで追いかける。外に出られなかった僕が自分から送る、と言った事に母は驚いていたがほっとした顔を見せてくれた。
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