そしてまた歩きだそう
恐る恐る近づく。その人影に気づいてないような、興味無いようなフリをしながら。その人影は、僕より少し年上くらいの小柄な、真っ白いワンピースを纏った女性だった。長い茶髪の髪を青いリボンでハーフアップにしている。
「なに、して…だめ、です」
気づいたら声をかけていた。彼女が今にも柵に掛けた手を離してしまいそうだったから。自分から誰かに声をかけたのは本当に久しぶりで、声は小さく震えていた。
「誰?」
彼女は、振り向き僕と目を合わせながら透き通った声で言う。よく見ると二重で鼻が高く小顔で、すごく美人だった。人と話し慣れてない僕は固まってしまった。長いような短いような、僕にとってはすごく長い沈黙を、このままではダメだと自分を奮い立たたせ断ち切った。
「ミヤ ナツル…です」
さっきより大きい声で言えた、ような気がする。久しぶりに言った自分のフルネーム。彼女は表情を変えずに視線を池に戻す。
「あたしはチカ」
まさかその場所のまま、名乗り返してくれると思わず驚く。彼女──チカさんはもう僕と目を合わせてはくれない。
「ねぇ、なんであたしの事止めるの」
「なに、して…だめ、です」
気づいたら声をかけていた。彼女が今にも柵に掛けた手を離してしまいそうだったから。自分から誰かに声をかけたのは本当に久しぶりで、声は小さく震えていた。
「誰?」
彼女は、振り向き僕と目を合わせながら透き通った声で言う。よく見ると二重で鼻が高く小顔で、すごく美人だった。人と話し慣れてない僕は固まってしまった。長いような短いような、僕にとってはすごく長い沈黙を、このままではダメだと自分を奮い立たたせ断ち切った。
「ミヤ ナツル…です」
さっきより大きい声で言えた、ような気がする。久しぶりに言った自分のフルネーム。彼女は表情を変えずに視線を池に戻す。
「あたしはチカ」
まさかその場所のまま、名乗り返してくれると思わず驚く。彼女──チカさんはもう僕と目を合わせてはくれない。
「ねぇ、なんであたしの事止めるの」