そしてまた歩きだそう
ご飯を食べて、テレビを見た。少しだけ勉強したら昨日家を出たくらいの時間になった。昨日よりも少し肌寒そうだったので、白のスウェットに着替えた。

「行ってきます」

珍しく僕が誰もいない家に声を放った。不思議と昨日より外が怖くない。昨日の今日でこんなにも変わるなんてなと思いながら、早足で公園に向かう。桜を横目で見て通り過ぎ、池に向かう。今日もチカさんがいるのかはわからい。いない方がいいはずなのに、いて欲しいと思っている僕がいる。

「あ、」

池に近づき、人影が見えたから僕は思わず声が出た。白いワンピースと長い髪を揺らし、柵の内側に立っていた。その姿を見た時ズキっと僕の頭の奥に痛みを感じたような気がした。気にせずそのまま池に向かって歩いた。

「今日は昨日より少し早いんだね」

チカさんだ。僕のことをちらっと見てから昨日より少しだけ高い声でチカさんは言った。服装は昨日と同じ。でも何故か雰囲気が違く見えた。

「そう、かな」

歩みを少しゆっくりにしながら僕が言う。チカさんがまた柵の内側にいた不安や悲しさ、チカさんに再び会えたことの嬉しさが同時にやってきた。

「そこ、座って少し話そーよ」

白いワンピースをふわっと広げながら振り返り、昨日1度もみられなかった笑顔でチカさんはそう言った。やっぱり今日のチカさんは昨日と少し違う。初めて見たチカさんの笑顔に動揺しながら小さく頷き木のベンチに腰をかけた。
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