凄腕パイロットは12年越しの溢れる深愛を解き放つ

『……明日、桜の丘で待ってる』


 高校近くの丘に立つ一本の大きな桜の木。春が過ぎて桜が咲いていなくても〝桜の丘〟と言われれば、すぐにわかる地元では有名な場所だ。


 
【桜の丘で結ばれたふたりは永遠に幸せになれる】
 


 私たちの高校では、昔からそんなジンクスが伝わっていた。女の子ならみんな一度は憧れる。前に『そういうの興味ある?』と尋ねられたとき、私も当たり前のように頷いた。

 だって、幸せは永遠であってほしいと思うから――。


 でも、約束の土曜日。
 高科先輩が現れることはなかった。

 何度もメッセージを送った。電話もした。けれど連絡がとれないまま十年以上の月日が流れた。今だに音信不通のまま、理由すら分からずにいる。

 写真の中にいる彼を見つめ、パイロットのあの人の姿を大人になった高科先輩に重ねていた。





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