凄腕パイロットは12年越しの溢れる深愛を解き放つ
「初日から悪いね。最近オープンしたばかりの三店舗のうち、まずはひとつずつ担当だけ決めて、仕事を覚えていってもらおうと思うんだけど……」
その瞬間、どくんと心臓が脈打つ。
真ん中に置かれた資料に映る真新しい木目調の店舗の写真。その上には【成田国際空港店】の文字があった。
「まあ基本は店舗に行って、店長とエリアマネージャーとの打ち合わせがメインだからそんなに難しいことはないよ」
安心させるように微笑む課長の言葉を半分に、頭の中はあのパイロットの男性のことでいっぱいだった。
担当すれば、成田に行く機会が増える。
そうしたら、また会えるかもしれない。
「やりたい店舗ある? なんて言われても困るとは思うんだけど――」
「あのっ」
冗談まじりに笑う課長は、悔い気味に声を出した私を見て目を大きく見開いた。
「成田の担当、してもいいでしょうか」
これは運命以外のなにものでもない。神様がくれたチャンスだ。そう思わずにはいられなくて、自分でも驚くくらい積極的にそう申し出ていた。
「なに、やけにやる気じゃん」
デスクの方へ戻りながら、加賀美くんが不思議そうに口にした。私は顔も上げずに「ちょっとね」と曖昧に答え、手元の資料をじっと見つめる。
先輩と瓜ふたつのパイロット。
もう一度、会って確かめたかった。