凄腕パイロットは12年越しの溢れる深愛を解き放つ

「いいなあ、ひとり暮らし。私もそろそろ実家出ようかな」


 お酒もすすんできた頃、未奈子が羨ましそうに口を尖らせながらトマトをつついてこちらを見た。ふと言った彼女の言葉に、私は「ああ」と苦笑いを浮かべる。


「ひとり、のはずだったんだけどね」
「はずって?」
「いや、妹が押しかけてきて」


 大学四年生のときに実家を出てから、ずっとひとりで暮らしてきた。ロンドンでは家賃手当がでていたから貯金もできて、新しいマンションは前よりちょっと広いところにしよう。そう思って、会社近くで広めの1LDKを借りた。

 それなのに引っ越した翌日、菜乃花が連絡もなく突然大きなスーツケースを持ってやってきて「私もここに住む」と実家を出てきてしまった。


「おかげで今、リビングは全部占領されてて」
「菜乃花ちゃんだっけ。自由人っぽいからなあ」


 私からたまに聞いていた菜乃花の話を思い出したのか、くすりと笑って納得したような顔をした。


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