凄腕パイロットは12年越しの溢れる深愛を解き放つ
「そっかあ。そしたら静菜、彼氏を家に呼んだりできなくなったね」
「……呼ばないし。そもそもいないし」
恋人はおろか恋愛自体、もう随分と疎遠になっている。
そうと分かって、からかっているから意地が悪い。ムッとため息をつくと、未奈子は「ごめんごめん」と笑いながら、通りすがりの店員さんに赤ワインを頼んだ。
「じゃあ、加賀美とはどう?」
すると、なんの脈絡もなくふられた加賀美くんの話題。鹿肉を口に放りながらじっと見てくる未奈子と目が合い、思わずきょとんと固まった。
「どうって?」
「んー、同じ職場になるの久々でしょ。うまくやれてるのかなって」
「そっか、たしかに」
新入社員のときは加賀美くんも同じマーケティング部に配属され、思い返せば仲良くなったのは未奈子よりも先だった。彼は二年足らずで異動していったけれど、要領の悪い私をよくフォローしてくれた。
「たまに話すくらいかな。でも知り合いがいるのは心強いよね」
「……ふーん」
変な間が空いて、なにか言いたげな目をする未奈子。気になって「なに?」と返しても、真顔で首を横に振った。
「仕方ない。今度、三人で同期会でもやるか」
ちょうど届いた赤ワインに口をつけ、半分くらい減らした頃、思い立ったように口にした。